ジーンズをリペアに出す

というわけで日曜日のサンフランシスコへ。

尻穴の拡大が無視できないところまできたEvisと13年モノのDry Bones。思い出が詰まってる上に、シルエットが好きで、どうしても手放せない2本。大好きなジーンズ屋であるところの”Self Edge”がリペアもやってるっていうんで、ぜひともと。

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Highway 101をCesar Chavezストリートで降りてValenciaストリートを右に。奥さんとよく行った22thのところのカフェ”Boogaloos”をすぎて、18thまで下ったところ。このあたりは店が集まってるわりには、駐車場があまりなくて、そもそも住人が路駐してるからマジ激戦区。2重駐車は当たり前。それどころか、しょうがないからって感じで、道路の真ん中の右左折用レーンに駐車する人多数。あれ、完全にアウトだと思うんだけど。


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幸運なことに店の近くにスペースを発見。直ちにウインカーを出してアピール。やばい、外人っぽい。高速道路の車線変更ではちっともウインカーださないくせに、駐車場で空きができた瞬間だけ、ガンマンかよってくらいのレスポンスでサインだしてくる外人っぽい。

ともあれ、店に到着。リペアお願いしますって、ジーンズ渡した瞬間、"Wow, this is old!!"って大喜び。

「どこで買った?日本、そうだろう!この尻ポケのステッチ、一番古いやつだもんな。あとはセルビッジ、SUSHI MIMIより前のやつ。そうそう、俺、革パッチはこの時代が一番好きなんだよ。いいのもってんな、兄ちゃん!」

コンディションが悪いからって嫌がるどころか嬉々として褒めてくれる。

「ここは?直す?そのままにする?ここのほつれはパッチあてる?それとも縫うだけにする?」

とかかも聞かれる。ダメージと味は紙一重。それぞれ好みがあるから。費用はどんな修繕でも一律。だから、一応、ボロボロであることを謝った。どうみても、値段以上の仕事になる。

「そんなんいいって!これなんて、まだいいよ。こっちの兄ちゃんなんてよー、膝から下がグズグズの糸くずになってるやつもってきてさー」

と、店内にいたタトゥーだらけのゴツい外人を指す。

「バイクでコケちまってさ、でも幸運の女神だから直してもらった」

「ありゃ、直すっていうか、改造だったよな!」

本当にジーンズが好きなんだと思う。初めて店に行ったときは、ドアを開けた俺のジーンズを一瞥するや、「それいいよな。でも14onceだろ、同じ型16onceのあるんだよ。そのタイプだと生地厚いほうがシルエットがクールだけど、どう?」って言われてビビった。なんか後ろのポッケ見てとかならわかるような気もするけど、正面から履いてるのみて何のジーンズでどんな型まで当てるんだよ。

あと、ここは、日本のメーカともジーンズを共作してるんだけど、店長が日本の長野のジーンズ工場に半年住み込みで、文字通り一緒に作ったりしてて、なんかいろいろすごい。ジーンズ好きすぎだろって思う。すごく美人な俺の奥さんと、生まれたばっかりのちょう可愛い娘を連れて行った時も、ひとっことも触れないでずーっとジーンズの話してた。日本人だと、日本でいっぱいジーンズ買えてうらやましいって言われまくった。そんな理由でうらやましがられたの初めてだよ。

とまあ、そんな店ですから、きっと良い感じに仕上げてくれるでしょう。できあがりは来週の同じ時間。あー楽しみ。

深夜にポリスに止められたからPS3買う

いろいろ考えながら深夜に帰宅中、警察にとめられちゃった。アメリカでは赤信号でも、一旦停止して安全を確認できれば右折*1してもOKなんだけど、ルールがあって必ずキッチリ止まらないといけないんです。が、昨晩はあたりに人っ子ひとりいないシチュエーションに油断して、草なぎくんみたいなやさしさ身にまとってふんわりブレーキだけで赤信号を右折しちゃった。

そしたらどこに隠れていたのか、たちまちご用!ご用!とばかりにポリスが出てきて車を止められました。

まあ、俺も初めてのポリス経験ってわけでもない( アメリカで警察に捕まる - GAME NEVER SLEEPS)ので、落ち着いて警官を待ちました。免許をみせて、どこから来たの?どこ行くの?え、働いてるんだ?どこ?なんてちょっと腑に落ちないやりとりをしてると、本部からの連絡が入ったみたいで、ちょっとゴメンとかいって、その警官、何か通信はじめた。大抵、このあと違反キップを切られて、いついつまでに出頭してねーみたいな流れなんだけど、なんか急用だったみたいで、次から気をつけてねー、じゃあグッナイ!って放免してもらっちゃった。

うわー、うれしい。なんせ俺がしたのはただの一時停止無視じゃなくて赤信号無視ですからね。他の違反よりも罪が重くて、時と場合によっては500ドルがとこ罰金を科されたりするんです。やー、よかった。これからはもっと気をつけよう。そして、捕まったつもりのお金で新しいPS3を買おう。

*1:日本と車線が左右逆

Saturn崩壊の序章

 アメリカで車を買った話 - GAME NEVER SLEEPSの続きの短信です。

この車の窓は、懐かしいレバーぐるぐる回して開閉するやつなんだけど、つまみのところがとにかくとれやすい。つか、どんどんとれやすくなってる気がする。かなり気を使って回さないとすぐにポロッといく。虫取り網に引っかかったトンボの頭くらいとれやすい。わかりにくいか、どうにも。なんつーか、とにかくもう、悪霊を封印した地蔵の頭にテレビクルーがぶつかった時くらいコロンコロン外れる。まじで。

これが困る。俺が住んでるカリフォルニアっていう土地はとにかく車社会なので、何かと車にのったまま用事を済ます、いわゆるドライブスルーのために窓を開ける機会が多い。銀行、薬局、郵便局。タコ屋にピザ屋にバーガー屋。たいていは細心の注意を払って回すんだけど、それでも何かの拍子に外れてしまう。後続の車にプップーとか鳴らされる。

今日も、会社の駐車場のゲートで、カードキーがポケットの中で引っかかっちゃって、よそ見しながらキコキコやってたら、パコッてとれた。俺の車の後ろにはすでに数台の列。うわーって焦ってつまみが刺さってた細い棒を指の先でつまんで一生懸命まわしてたら、今度は根っこからレバーがもげた。

とりあえずちょっと照れながらドアを開けて車を降り、カードキーをセンサーに反応させて事なきを得て、無事に駐車。拾ったレバーとつまみを持ってしばし途方に暮れる。レバーを元どおりっぽく挿して、つまみをくっつけてみる。おー、なんか直ったっぽい。回す。取れる。

うおー、レバーとつまみで2重に取れやすくなってしまった。大学1年の夏にエヴァ弐号機のプラモで「アスカ来日」の決めポーズつけようとして、腕が決まるとナイフが取れて、ナイフが決まると腕がもげる体験を忠実になぞってきやがる。車のくせに。負けるか。直す。回す。取れる。直す。回す。回る。お?回る。やった!と思ったら取れた。何度か同じシーケンスを繰り返してだいぶコツをつかんだが、外れる瞬間を察知して「ああっ!」って声をだすのが精一杯。

というわけで、茶色のSaturnが料金所やドライブスルーで立ち往生してたら、クラクションなど鳴らさず、温かく見守ってください。あとできれば外れるな!って念を送ってください。よろしくお願いします。

なんでも反論マン現る

ゲームなんてものを作ってますと、わりとよく、「なんでも反論する人」にでくわします。アメリカ来たから一安心かと思いきや、やっぱりいるんです。とにかく否定から入ってくる。でも、いくら話しを聞いても何を批判してるのかわからない。困ったもんです。この手の人たちはなぜか企画系に多いですな。

「頼まれてたエネミーの仕様ですけど、こんな感じでどうでしょう?」

(しばし読む)

「んー、ちょっとアレだねー」

「アレっすか、いまいちですか?」

「あー、いまいちってわけじゃないんだけどさー、攻撃がアレかなー」

「普通すぎとかですか?」

「いやー、普通すぎってわけじゃないよね、別に……」

(ハァ?)

「それでIDA-10さあ、このエネミー倒せるんだよね?」

「まあ、ゲームですから倒せないとバグですよね」

「そうかな?」

「え?」

「え?」

いや、ほんとにいるんですよ、こういう人。特に主張があるわけでもないのに、とりあえず「いやそれはさ……」みたいに返す人。なにが、そうさせるんでしょうね。ここだけの話、企画職の中でもほんとに企画しかできない、自称「アイデアマン」に多い気がします。コンプレックスから生まれる心の闇がそうさせるんでしょうかね。

や、企画がいらないってんじゃないですよ、こんな記事(それでもゲームデザイナがゲームデザインする理由 - GAME NEVER SLEEPS)も書いてるくらいですし。ただ、よっぽど飛び抜けた発想力でもないかぎり、アイデアしか出せない人間なんてゲーム作るのにいらないわけですよ。

閑話休題。で、中にはさらにこじらせて説教属性が加わってる悪魔超人もいてですね、ミーティング中にこれが始まっちゃうとほんとに困ります。みんなの前で口論するわけにもいかないし、でもなんか俺批判されてるし。どうしろと。

「じゃあ、このオブジェクトに貼るテクスチャは1024x1024で解像度ちょい高めにいって良いですね」

「いやー、ニゴロ(256x256)で十分じゃない?」

「あー、でもわりと近くで見えちゃいますし、敵もあんまりでないんで……じゃあ、512x512にします?」

「昔はさー、ゴイッチニー(512)なんて贅沢でつかえなかったけどなあー」

「ここはちょっと贅沢でも大丈夫ですんで」

「いやここだけの問題じゃなくてさ、ディスク容量とか大丈夫?」

「はあ……」

「グラフィックに頼ってもゲームが面白くなるわけじゃないぞー」

こんな感じで埒があかない。この人が素材をつくるわけじゃないんですよ?しょうがないから、後でなんだかんだ言って差し替えればいいかーとか考えながらその場は妥協しようともちかける。

「じゃあ、256x256でいきましょうか」

「うーん、それはそれで難しいんだよなー」

どっちだよ!

「いや、ぶっちゃけ256ないっすよ、とりあえず1024x1024でいきましょう」

「IDA-10なー、なんでも否定から入るの良くないぞー」

俺かよ!

左様にゲーム制作ってものは気疲れがするものでございまして、結局何が言いたいかというと、日本もアメリカもまあ変わらんなと。困った人は万国共通だったって話でした。

アメリカでDOUBLE RAINBOW!が大流行

先々週?くらいから職場で流行りまくってるフレーズが"ダボーレインボー!"。たいていこれに"オーマイガー!"、"ホワッダズディスミーン?(What does this mean?)"が続いて、みんなで"オオオゥゥ!"と感激しまくる。あ、まって、ブラウザ閉じないで。

元ネタはこのビデオ。たしかインディペンデンスデイの週末あけくらいから流行りだした。Jimmy KimmelってABCの名物司会者*1Twitterにリンクをポストしたのがきっかけらしい。7/30夜9時現在で820万ビューくらいある。

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アーティストがちょっとした素材を仕上げると、みんなして"オーウッ!"、"アァーオッ!"、"ダボーレインボー!"、"オーマイガー!"、"ソー、インテンス!"連呼。さらに、それに気の利いた技(木の枝をアルファじゃなくて、パンチで抜いてたり)がしこまれてたりすると嗚咽をもらしながら"トリポーレインボー……ッッ!"。

うちの職場だけじゃなくて、アメリカ中馬鹿みたいに盛り上がってて、アンサーソングがボコボコつくられて、iTMSで売られるしまつ。マスメディアにも取り上げられて、CBSはインタビューするわ*2、CNNは記事をかくわ、まあ大炎上(←間違った使い方)しております。

というわけで、いまさら感バリバリですが、ひさびさに翻訳ネタっぽいやつでした。EngadgetもGizmodoもKotakuも日本語版できたし、本家のネタをまんま翻訳して紹介するニュースサイトもいっぱいあるので、最近やってなかったんですが、なんとなく観測圏内でみかけないので、一応。

おまけ:俺的に一番よかったDouble Rainbow Song

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*1ジミー・キンメル・ライブ! - Wikipedia

*2:インタビュアーがクソむかつくので注意 Double Rainbow Man Speaks - YouTube

ゲームを作ってるときに心がけてること

今日はプレイテストがあった。開発中のゲームを、ある程度傾向の定まったグループに遊んでもらって、マジックミラーとかカメラごしにどんなところで詰まるのかみたり、あらかじめ用意した質問に答えてもらったり、ゲームの良かったところ悪かったところを討論してもらったりするイベントだ。

まあ、数週間おきにやってるもんだから、ある程度評価が予想できるし、いつもつい気が重くなってしまう。なぜかというと、けっこう厳しいことを言われるから。

特に若いグループは批判がキツくて、「PS2並」とか、「つまらない○○(大作タイトル)」とか、「ダウンロード用ならいいんじゃん」とか、「え、これ売るの?マジで?」とか、おしっこ漏れそうな罵詈雑言を毎回聞かされる。

だが、今回は違う。僕は周りに今回は大丈夫って宣言してた。ゲームの内容に対するチュートリアルが入り、ストーリーが語られるムービーが入り、適切な音楽が流れ、要するに最終的な製品とだいたい近い形でテストができるからだ。周りの反対を押して、無理矢理しこんできた大小の仕様が報われる日だ。

固唾を呑んでプレイを見守る俺たち。おい、なんか反応いいぞ。プレイヤーが興奮してプレイするのを見て僕たちも興奮。手に汗握る。始めて実装されたカットシーン。笑って欲しいシーンで笑ってくれた!隣のシネマティクス担当のアーティストとハイファイブ

一人がいよいよボスまで進む。今まで適当なボタンの連打でやっつけられて、ボスなのに「スト2のボーナス面の車」って言われてたやつだ。今、ヤツは強い。でもヒントをちゃんと配置して、使うべき攻撃をステージ通して学習するようになってる。プレイヤーやられる。くやしがる。再度チャレンジ。ああ、違う!またやられた。お、なんかひらめいてる!そう!その攻撃!会心の一撃!うまくヒットしてボスを倒した!プレイヤーがぐっとガッツポーズ!僕たちもみんな一斉に立ち上がりガッツポーズ!誰彼かまわず拳をぶつけ合い、ハイファイブ。ヤー!イエス、イエス!プロデューサー(中年男性)がハグしてくる。さらりとかわす。

このプロジェクトではじめて一緒になったメンバーが驚く。「IDA-10の言ってたのはこういうことなんだね。」「必要だってこだわってた仕様の意味がわかった。」「どうやってこの結果がわかったんだい?」

彼らと僕の違いはなんだろう。

たぶん、仕様の「完成」の基準が、違う。僕は、ゲームの仕様は、ただゲーム内で正しく動くだけじゃなく、お客さんが遊んで喜ぶところまで想像できて始めて完成と考える。彼らを見てると、ゲームの枠のなかでつじつまが合って面白そうなら、それでよしとしてしまうように思える。自分でテストしたら楽しかった、見ててとにかくかっこいい。それですましてしまう。

パッケージをあけてディスクをいれてゲームを始めて、何も知らないプレイヤーがどう感じるか、1時間遊んだら、2時間遊んだら、どう変化していくのか。そこまで想像すると、自ずと細部が決まってきたりする。ちなみに、プレイヤーの想像だけじゃなくて、雑誌に載るときはどうか、トレイラーはどうか、友達に話すとしたらどこか、とかも意識しておくといい。どこに注力すべきかがより明確になる。全方位に全力投球できるプロジェクトはまた違うだろうけど。

というわけで、プレイテスト最後の質問「このゲーム買う?」の答えが、定番だった「ネバー!」から、始めて「買う!」に転じたプレイテストでした。なんか似た経験したなーと思ったら2年前のプロジェクトでデモがウケた時( ゲームのデモ版の恩恵 - GAME NEVER SLEEPS)だ。あのプロジェクトも辛かったが、今回も辛い。まだまだ完成まで道のりは長いけど、何かいけそうな気がしてきた。やるぞー、おー!