ゲームを作ってるときに心がけてること

今日はプレイテストがあった。開発中のゲームを、ある程度傾向の定まったグループに遊んでもらって、マジックミラーとかカメラごしにどんなところで詰まるのかみたり、あらかじめ用意した質問に答えてもらったり、ゲームの良かったところ悪かったところを討論してもらったりするイベントだ。

まあ、数週間おきにやってるもんだから、ある程度評価が予想できるし、いつもつい気が重くなってしまう。なぜかというと、けっこう厳しいことを言われるから。

特に若いグループは批判がキツくて、「PS2並」とか、「つまらない○○(大作タイトル)」とか、「ダウンロード用ならいいんじゃん」とか、「え、これ売るの?マジで?」とか、おしっこ漏れそうな罵詈雑言を毎回聞かされる。

だが、今回は違う。僕は周りに今回は大丈夫って宣言してた。ゲームの内容に対するチュートリアルが入り、ストーリーが語られるムービーが入り、適切な音楽が流れ、要するに最終的な製品とだいたい近い形でテストができるからだ。周りの反対を押して、無理矢理しこんできた大小の仕様が報われる日だ。

固唾を呑んでプレイを見守る俺たち。おい、なんか反応いいぞ。プレイヤーが興奮してプレイするのを見て僕たちも興奮。手に汗握る。始めて実装されたカットシーン。笑って欲しいシーンで笑ってくれた!隣のシネマティクス担当のアーティストとハイファイブ

一人がいよいよボスまで進む。今まで適当なボタンの連打でやっつけられて、ボスなのに「スト2のボーナス面の車」って言われてたやつだ。今、ヤツは強い。でもヒントをちゃんと配置して、使うべき攻撃をステージ通して学習するようになってる。プレイヤーやられる。くやしがる。再度チャレンジ。ああ、違う!またやられた。お、なんかひらめいてる!そう!その攻撃!会心の一撃!うまくヒットしてボスを倒した!プレイヤーがぐっとガッツポーズ!僕たちもみんな一斉に立ち上がりガッツポーズ!誰彼かまわず拳をぶつけ合い、ハイファイブ。ヤー!イエス、イエス!プロデューサー(中年男性)がハグしてくる。さらりとかわす。

このプロジェクトではじめて一緒になったメンバーが驚く。「IDA-10の言ってたのはこういうことなんだね。」「必要だってこだわってた仕様の意味がわかった。」「どうやってこの結果がわかったんだい?」

彼らと僕の違いはなんだろう。

たぶん、仕様の「完成」の基準が、違う。僕は、ゲームの仕様は、ただゲーム内で正しく動くだけじゃなく、お客さんが遊んで喜ぶところまで想像できて始めて完成と考える。彼らを見てると、ゲームの枠のなかでつじつまが合って面白そうなら、それでよしとしてしまうように思える。自分でテストしたら楽しかった、見ててとにかくかっこいい。それですましてしまう。

パッケージをあけてディスクをいれてゲームを始めて、何も知らないプレイヤーがどう感じるか、1時間遊んだら、2時間遊んだら、どう変化していくのか。そこまで想像すると、自ずと細部が決まってきたりする。ちなみに、プレイヤーの想像だけじゃなくて、雑誌に載るときはどうか、トレイラーはどうか、友達に話すとしたらどこか、とかも意識しておくといい。どこに注力すべきかがより明確になる。全方位に全力投球できるプロジェクトはまた違うだろうけど。

というわけで、プレイテスト最後の質問「このゲーム買う?」の答えが、定番だった「ネバー!」から、始めて「買う!」に転じたプレイテストでした。なんか似た経験したなーと思ったら2年前のプロジェクトでデモがウケた時( ゲームのデモ版の恩恵 - GAME NEVER SLEEPS)だ。あのプロジェクトも辛かったが、今回も辛い。まだまだ完成まで道のりは長いけど、何かいけそうな気がしてきた。やるぞー、おー!