ソーシャルゲームとか無料ゲームとかゲームの未来とか

さいきん日本語圏の人から立て続けに「無料ゲーだのソーシャルゲーだの、まじサックっすよね?」的な同調を求められたんで、一応今のスタンスを表明しようかなと。ていうか、前からたいして変わってないんですが、Twitterにこんな

内容の投稿をしたせいかもしれないし、このブログでは今世代コンシューマゲーム開発の話が多いせいかもしれないけど、思ってもいないレッテル貼られて余計な敵をつくってはたまらん。というわけで、夢見がちなコンシューマゲーム開発者こと僕の近視眼的な結論は、

「無料ゲームへ流れは止めようがない。だから、今までゲームを遊ばなかった人が『ゲーム的な何か』に興味をもったり、まかり間違って財布を開く気になったところに、すかさず自分の好きな遊びを売り込むしかないんじゃね?」です。

この波がきた当初は、「うわーすっげー儲けてるじゃーん!どうやんの?どうやんの?おせーて!おせーて!」っていう見方が勝ってたんですが、ちょっと遊んだり調べたりするうちにあっというまに暗ーい気持ちになったりもしました。早い話が、「あー、ゲームっぽい時間つぶしのニーズを無料で充足されちゃったらうちら滅ぶわ。圧倒的なトップ以外さよならじゃーん。」って感じですね。立場こそ違えど、島国大和さんの考え(ゲームのフリーミアム化について本音を書いておくか。 島国大和のド畜生)と近い感想(だと勝手に思っています)。しかも、初期に比べてどんどんゲームが洗練されてきてるし、良くできたのも多い(ちなみに、このへんのイテレーションの妙というか技術は、個人的にどんどん見習いたい)。まさかこの僕がソーシャルゲームと呼ばれるものにお金を払うと思わなかった。

でも、これ氏も以前から仰っていますし、いろんな形で「旧来のゲームやばい」って話はずーっと前から言われてたことで、コンシューマのゲーム開発者だったら来る来るって予見してた未来のはず。ていうか、だいぶ前から段階的に起きている事象だと思うんですよ。そのひとつは「ゲームはドラクエとFFみたいな大作しか遊ばないお客さんが増えて、そこそこのゲームは立ちゆかなくなる」みたいな話で、事実、そうして去っていったゲームメーカーはすでにかなりあると思います。

だから、無料ゲームが旧来のゲームを殺す!みたいなことはもちろん深刻です。なんですが、まあ覚悟はあったという意味で、これまでゲームどころか、現実と関係ないものに一切興味を持っていなかった人が嬉々としてアングリーなバードを飛ばしてたり、ズーをタップしてたりするのを目の当たりにしたときの、

「流行すげー!世の中の力すげー!」

という素直な実感のほうが今僕の中では大事なかんじです。つきましては、「あの鳥が描く軌跡、『ギアーズ・オブ・ウォー』のグレネードの放物線とそっくりだよ!このゲーム、カーマインってやつが傑作でさ……」とか、「動物園?『ルナーク』ってゲームならもっとダイレクトに動物守れるよ!」とか、無理のある説得を試みるよりもですね、波にうまく乗って、そういったゲームを遊ぶ人のほんの一部にしか刺さらないけど、自分もすごく楽しめて、生きるのに必要なくらいのお金を払ってもらえるゲームを考案してみちゃったりしたいなーと、Free2Playとか呼ばれるゲームに関してはそう思います。

だって、AAAと呼ばれる超大作やトガりまくったエッジーなゲームの需要はまだしばらくあるとして、ここさいきん無料アプリで遊んでる人たちがゲームっぽいことする時期って、へたしたら彼らの一生で今だけかもしれないじゃないですか。ていうかもうピーク過ぎそう?てる?気配ヒシヒシじゃないですか。急がないと!って気持ちでいっぱいです。

で、まあそれが目先の感想ででしてね。ポエミーでドリーミーな話も少しするとですね、同僚から、フィリピンの実家に帰ったら文字もろくに読めないおっかあがフェイスブックのゲームやってた!信じられん!ってエピソードを聞いたり、アフリカの発展途上地域に寄付されたPCで無料ゲームが意外に遊ばれてたりとかいう事実を知るとですね、「たまごっちもテトリスキーホルダーも流行ったけど、結局一過性だったじゃん」(「WiiとDSのブームで寄ってきたライトユーザーは、結局ブームが去ればいなくなったじゃん」でも可)みたいな、何回ループすれば気が済むんだよ!的な話とは次元が異なる新しい時代のダイナミズムを感じるわけですよ。さらに、無料のゲーム開発ツールであるところのUnity(http://unity3d.com/)とかUDK(http://www.udk.com/)とかの充実をあわせて考えるとですね、ほんとうにもう、電子ゲームという遊びそのものの未来がどうなるのか、楽しみでしょうがないわけです。世界のすみずみまでネットワークが行き渡って、FacebookiTunes Storeのようなあまねく広まったゲームを商売にする基盤があって、その開発ツールが無料で手に入るのが2011年です。アフリカのジャングルで育った人が作ったゲームとかちょう遊んでみたいし、僕の作ったゲームの感想を聞いてみたい*1

とまあ、こんなところでしょうか。一応いっとくと、だからコンシューマゲーム開発者は安心していいとかそんなことまったくないですよ。まったくない、まったくないんだよ!畜生!誰か助けてー!

*1:もちろん、世紀末ころWWWで俺様ちゃんが全世界に情報発信!とか盛り上がってたのに今じゃおしっこ我慢してまーすみたいなどうでもいい文字列を垂れ流してる現実とかも知ってるわけですが、まあいいじゃない。