『シーマン2 ~北京原人育成キット~』が熱い

今、僕は『シーマン2 ~北京原人育成キット~』(http://www.seaman.tv/)に惹かれている。これはDCで最高の売り上げ本数を記録した『シーマン ~禁断のペット~』や、GCにおける『大玉』を開発した斎藤由多加氏が代表を務めるビバリウム(VIVARIUM)の最新作だ。

トレーラー(http://www.seaman.tv/seaman2/movie.html)を観る。

佇む北京原人と、バナナが一本。
プレイヤーがマイクに向かって「ムキンポ!(北京原人語)」と叫ぶ。
バナナをつかむ原人。
意を得たように「ム……ムキンポッ!!」
コミュニケーション成立。

ヤバい。熱い。

いや、ただのネタではなく、これは、かなり「今」な構造を持ってるゲームだと思う。すなわち、「デジタルな判定に対して、ユーザーがアナログであると感じるようなリアクションがある」という構造を持っているのだ*1

最近のゲームで具体的な例を挙げるならば、『The Elder Scrolls IV: Oblivion』のNPCの行動は、ひとつひとつを見るとけっこうスクリプトっぽい挙動なんだけど、その発動条件があまりにも多くて、生き物っぽい感じがしちゃうとか、『Wii Sports』のテニスでは、地味な工夫の積み重ね*2によって、リモコンの振りと玉の挙動がリアルにリンクする感覚が得られてたりとか、そのへん。

で『シーマン2 ~北京原人育成キット~』だけども、ムービーをみるかぎり、どうやら、『シーマン』と違って「北京原人語」で話しかけなければいけないらしい。これがとにかくすごい発明だと思った。

音声認識を用いたゲームにおけるネガティブ要素である、「自分の声を認識しない」という難題を、「認識しない→原人語がしゃべれてない」という問題にすり代えることで、すべてはユーザーの責任に転嫁し、逆に面白さにつなげることができる(と推測される)。

自分の原人語を認識しなかったのは、本当はバグのせいかもしれない。ノイズのせいかもしれない。でも、「あ、今の原人語、発音イマイチだった?」と自分のせいかのように錯覚してしまう。そこがうまい。

このへん(id:IDA-10:20060602:1149237219)でも触れたけど、ミスが自分の責任であると思えるゲームは、逆に言えば、自分の行動がきちんとゲーム内に反映・評価されてると感じている状態でもあるはずで、そこに面白さが発生する可能性が高い。プレイしていて「あそこで、ああすればよかったのに!」みたいなセリフが思わず飛び出すイメージ。

あと、単語を認識できなかった場合に、聞いていなかっただけという、シーマンに見られた優れたリアクションもあるはずだし、なんせ生まれたばかりの原人なんで、ちょっとくらいわかんなくても自然。つか現代人と原人がそんなに簡単に意思を疎通できるはずがない。

このように、音声認識ゲーの弱みである、誤認識とそれに起因するストレスの軽減に対して磐石の構え。

このへんは、別に音声認識に限った話ではなく、Wiiリモコンをはじめとした、アナログデータを入力するペリフェラルを使ったゲームや、ゲームシステム内でアナログっぽいとユーザーが感じるデータを取り扱うゲーム全てに当てはまると思う。

というわけで、デジタルをアナログっぽく認識して幸せなゲームを作りたいならば、真面目に研究しないといけないムキンポだと思った。

さらに言うなら、結果的に必然だったにせよ、「原人語」を持ってきたことで、音声認識部分のローカライズが要らなくなる(はず)なのも、すげえスマート。単語登録から、最終的なネイティブスタッフによるテストプレイとフィードバックとかまで考えると、多言語化のコストは相当なものになるはずで、そこを回避してるのも、かなりムキンポ。

あとユーザーは実在の自然言語は無限に知っているけど、北京原人語は新たな言語なので、「こんな簡単な日本語も認識しねえのかよ!」という状況が無くなるのがムキンポ。制作者側で辞書の総量をコントロールできるからムキンポ。

というわけで、発売後には、音声指示ゲーとして、『大玉』『オペレーターズサイド』、神様ゲーという観点から、『げんしのことば』『ワンダープロジェクトJ』辺りとの比較もムキンポ。

*1:もちろん、これは今僕が感じているナウさであって、そんなに気にしないでください。あと、もちろん、遊ばずしてゲームを語ることはナンセンスなのは百も承知でありまして、あくまで、今分かってるだけでも、構造が良いね嫉妬しちゃうねって話です。

*2:「岩田:あれはいまだに驚きなんですよね。どうしてリモコンを振るだけでボールの回転があれほど変化するのか、いまだにはっきりわからない。太田:地味に、いろんな工夫をしてますので(笑)。」http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol4/04.html ←このへん参照