生きてるだけでアイデアが浮かぶ!発想術

以前の記事で、「企画が提示すべきアイデアは、みんながアイデアマンになれるアイデアだ」と書いた(id:IDA-10:20060227:1141035450)。これはつまり、「アイデアがたくさん出てくるようなフレームを提示しよう」ということだった。その時は、どうやって発想するかについて触れなかったが、ちょうど今、プロジェクト立ち上げにあたり、僕自身がアイデアを出す期間なので、メモとして書いておこうと思う。

もちろん、アイデアの出し方なんて、それこそ十人十色だし、山ほど関連本も出ているし、あくまで、僕がゲーム制作でやってきた方法のメモということでお願いします。

結論から言うと、1ヶ月~数ヶ月、意識と理解の間に、開発中のゲームのフィルターを設置するのが僕のやり方だ。現実を見て、ゲーム中だったらどう表現されうるかのチェックを、できうる限り、すべての事象に行う。いつも。どこでも。ずっと。ずっと。

ここでのポイントは、あくまでも「開発中のゲーム」のフィルターを通すということである。ただ、闇雲におもしろネタを探すのではなく、具体的にこれから作るゲームの中だったらどうなるかを考えると、モノになる確率が段違いに高くなる。担当ステージが決まっているなら、さらにそのステージに当てはめて考えると、さらに精度が高まるだろう。

僕がそうしている時の状態を、言語化してみると以下のような感じになる。架空のアクションゲームの1ワールドを担当しているという設定にしてみた。

  • シャンデリアを見る
  • ざっと要素分解
    • ぶら下がるもの
    • 光るもの
    • 円をピラミッド型に構築
  • ゲームっぽい要素の抜き出し
    • ぶら下がる→ゆれる?
    • 光る→ONOFF?
    • ピラミッド型→地形?
  • 開発中のゲームに代入
    • ぶら下がってゆれてる
      • タイミングで避ける障害物?
      • ボスが足踏みするとシャンデリアが落ちてくる?
      • タイミングでわたる移動足場?
        • シャンデリアを撃ってぶらぶらさせてから?
        • 蹴るとアメリカンクラッカーのように?
        • 地形を振動させてから?
          • どうやって振動?
          • ボスの足踏みとか?
          • ボス戦用か!
    • 光のONOFF
      • スイッチが別に?
      • 光を当てると蓄光
        • 壁や天井に穴をあける?
        • 鏡を回転させて光を届ける?
      • 一本ずつ点灯?
        • チェックポイントとして機能?
        • フラグONの表現として?
    • 地形?
      • どんなシチュエーションだよ!
        • プレイヤが小人化する?
        • プレイヤの大きさはそのまま、シャンデリアのような光る何かで作られた地形

とまあ、あえて派手なネタではなく、目の前にあったポスターに映っているシャンデリアでやってみた。ざっとみていただければわかるとおり、たいしたネタは出てこない。ダメじゃん!あー、しかしながら、これを起きてる間中続けることで、最低でも数日に1度、ノリノリの時は1日に何度も、「おっ」と思うようなアイデアが出てくる。

そして、この「おっ」と思うようなネタが、「みんながアイデアマンになれるアイデア」であることが多い。みんなが即座に「おもしろそう」と引っかかり、かつ、発展的にどんどんネタがでてくる。ネタがネタを呼ぶような感じ。もともと、現実の具象をゲーム中に代入するところから始めているので、ゲームデザインへ落とすこともそう難しくないはず(実装が簡単とは限らないが)。

もし、「おっ」と思わなくても、たくさん連鎖したアイデアは、そこから良いネタが生まれることも多い。むりやり上記の例で言えば、どれだろ、「ぶら下がるシャンデリア=移動足場」かなあ。物理演算も使えてちょっと今風だし。

さらに一応「脳内ミーティング」を開き、みんなの反応をシミュレートしてみる。ネタのシャドウボクシング。ここで、ネタとして弱い部分や、アイデアが連鎖するかどうかの手応えもなんとなくわかるはず。

「ぶら下がってるシャンデリアを移動足場にして向こうに渡るとしたら、どうやって渡りましょう? 僕が考えたのは、例えば、撃ったり蹴ったりしてブラブラさせてから飛び乗ると向こうに渡れる感じなんですが。ちなみにブラブラは物理演算です。」

「並べて、アメリカンクラッカーみたいに連鎖しても面白そうですよね。」

「ああ、確かに物理演算だと、絶対うまく行かないですね。」

「あと、このネタってボス戦にも使えてすげえお得なんですよ!」

「デカいボスで頭が弱点、足踏みが攻撃なんだけど、それでシャンデリアが揺れるので、それを渡って、頭を直接攻撃するんです。それまでに伏線として自分で揺らしてるんで、けっこう解るんじゃないかなあ。」

「ああ、確かに関連性が薄いんでユーザーが認識するのは難しいかもしれませんね。」

「でも、そこは見せ方じゃないですかねえ、ほら『ゴッドオブウォー』とかでもそうだし。ボス登場のデモムービーで、シャンデリアが揺れてるのをカメラがなめれば、ピンとくると思うんですけどねえ。」

「いや、ボスの攻撃が同時にボスの弱点でもあるっていうのは、やっぱり面白い要素ですよ。ユーザーにとって無駄な時間がなくなるじゃないですか。」

とまあ、こんな感じ。

始めにこの期間を最低1ヶ月と書いたのは、これを続けることで、上記のような思考が反射的に行われるようになってくるのだが、その感覚はだいたい1ヶ月ぐらい続けたあたりから始まるからだ。それが僕にとっては、「フィルターを通した」ような感覚で、こうなると、寝ても覚めてもずーっとゲームの中で生きてるような感じになる。

ちなみに現実世界では、すぐに黙りこんだり、いきなり瞳孔をひらいたまま微動だにしなくなったりしているようだ。かと思えばいきなりポケットから手帳出して猛烈に書きこんだり、指をひらひらさせて(プレイヤに見立ててる)ブツブツ呟いたり、挙動不審な人に見えるらしい。家族にもはなはだ受けがよろしくない。

困ったことに、良いアイデアは、子供と遊んでいる時に降りてくることが多かったりするので、子供との遊びを中断してしまい、何度も「お父さん、また立ったまま寝てるー」と妻に告げ口されている。もちろん、怒られる。でも、妻が僕の仕事を理解し、支えてくれるおかげで、今の僕があるし、仕事も続けていられる。本当にありがとう。

あれ、なんの話だっけ?