レベルデザインはどこから来るの

島国大和さんがゲームバランスの話をしていた。

ゲームバランスについて、基本的に計算で求められる数値を基準にするいう考え方は、制作者としてとても大事だとおもう。どんなに爽快感あふれるアクションゲームを作っていても、世界観重視のアドベンチャーゲームを作っていても、具体的な数値を基準に制作が進められるべきだ。

ゲームのバランスは、遊んでなんぼ、逆に遊べないとバランスなんて取れないという考え方は、正しい。正しいが、一発目に作られるゲームの精度が高ければ、仕様変更に伴う各セクションの追加作業や、予想外のトライアンドエラーの時間が大幅に減る。

外部機関のプレイレポートや発売前のユーザーテストによって、バランスの調整を求められた場合も、元々の数値が論理的に求められていれば、それに基づいて狙い通りの調整がしやすい。

結果、ユーザーの手に渡る製品のクオリティが上がる、卑近な表現をすれば、もっと気持ちよくなるわけで、僕は、この姿勢が正しい方向だと信じている。

以上、自分の考え。以下、せっかくなんでバランスにも関わるレベルデザインの初期段階の話でも。自分の場合は、根幹のゲームデザインが決定したら、「時間」を基準に調整することが多い。

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例えば、ステージクリア型のアクションゲーム。

まずは、このマップは何分でクリアされるべきか。緊張と開放の時間の割合はどうするべきかを、ゲーム全体の流れから求める。その後、レベルデザインを、想定されるプレイ時間を軸に決定していく。

シナリオ上、スピード感あるステージが望ましい。だったら【全体で3分】程度がいいだろう(このへんは経験からくる勘*1)。で、爽快感重視で3分だったら、【1分は緊張】、【2分は開放】に当てるくらいが適当か(このへんも経験を頼りに)。

このステージの緊張部分は1分だから、しかけはごく軽い足止め程度のものになる。【ぶつかったら5秒ロス】するものにしよう。このステージの世界観で5秒止まるのって何だ?じゃあうんこで。

ユーザーごとのプレイの違い、上手下手はどこで生まれる?速く進行するステージだから、プレイ中にいちいち見極めさせたり、考えさせたりするの避けたい。ノリが損なわれる。なるべくステージ内の要素をしぼって、ユーザーの意思決定をシンプルにしたい。

だったらエネミーにその機能を持たせよう。早くクリアするステージだから、【上手に倒せたら10秒加速】するようなギミックにしよう。それってどんな形状になる?じゃあちんこで。

と、ここまで来たら、プレイヤの基本的な運動性能から、3分程度でゴールに到達できるだろうマップの距離を求めて、緊張と開放の持ち時間を、マップに当てはめつつ、ざっくりとした構成を決める。

スピードステージだって印象づける意味でも、最初はやっぱ加速からだよな。じゃあ、いきなりここは【30秒開放】ね。スピードを実感させるために左右の壁を近くにします。そしたら、パっと視界が開けてこのステージの世界観をばーんと魅せる感じで。そしたら最初の敵かな。まあ、最初だし、【学習の意味で緊張10秒】くらいでいいだろ。ここは少し地形を狭くして、敵に気づくように誘導しようね。

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細かい話をすればきりがないけど、だいたい、こんな感じでRPGもアクションもミニゲームもやってきた。バランス調整の大枠は【】でくくった時間を基準に行って、あとはそれにあわせて敵の体力だとかを調整する。

ちなみに、プレイヤの各種動作にかかる時間や、ウインドウの開閉タイミングとかも、プレイ時間30分中に何回発動するとトータル何秒とかわかる。どんなにカッコいいモーションでも、アクションゲームで1プレイ中、トータルで2分それ見なきゃいけない(ユーザーが操作できない)とかだったら、たぶん、短くしてもらったほうが良い。

もちろん、プレイ時間を想定してデザインすることがナンセンスなゲームが増えてきてるし、これが正解なわけではないと思うけど。とにかく、ある程度理屈で説明できる基準がないと、アーティストにマップを発注するにしても、プログラマに仕様伝えるにしても、ゲームを作るの難しいよねって話です。

*1:ここでたくさんゲームを作ってたり、たくさんゲームで遊んでたりすると、具体的にあのゲームのあのステージがこうだからこのぐらいって言いやすい