妻からのセンタリング

ディズニーアニメ版を何度となく見返してストーリーを完全に覚えているので、英語に弱い家族でも楽しめるだろうとピーターパンのミュージカルに行った。観客が、フック船長の初登場シーンで、息のあったブーイングを浴びせたり、やたらと"YEAH!!!"とか"WOW!!!"とか盛り上がるリアクションもあわせて、大変楽しめた2時間だった。

しかしながら、アニメと違ってリアル系のエンターテインメントを観たあとはたいがいそうなのだが、終劇後の長男の質問コーナーが若干厳しかった。ちなみに彼は窓から吹き込む風の音を聞いて「風さんがおしゃべりしてるぅ」とのたまったり、当然サンタさんを信じていたり、やたらとポエジーな6才の男子です。

で、ピーターパンがまいた紙吹雪を拾った息子が、
「この妖精の粉は本物?」
と、聞いてきた。
答えようによっては純真な彼の夢を壊しかねない微妙な質問。

こういう場合、夫婦の連携プレイが非常に重要になる。

「うーん、これ、キラキラしてるよね(紙吹雪は銀紙だった)」
とまずは俺からの無難なパス。

「あー、そうそう。それにさー、妖精の粉ってピーターパンが飛んだら降ったよね?」
来た。いい感じに妻からのセンタリング。

「うん!そうだよ!ピーターパンが飛べたんだから本物の妖精の粉だよ!」
ぴたりとあわせた俺のシュート。

「そーかー!」
納得する息子。ゴール!ゴール!

息子の背後で妻とがっちり握手。どんと来い、息子よ。

さて、次の質問。

「ピーターパン飛んでたときね、頭にヒモがついてたんだけど……あれ何?」

来た。来ちゃった。ヤバいよ。これ。なんせ長男は劇中に陽気に飛び回るピーターパンは、本当に浮かんでいると信じている。なんだよ、ボーッと口開けて観てたわりには、よく観察してるな。うわー、でもどうしよ、これ。とりあえず、ボールを回そう。

「えー、ヒモなんかあった?お父さん気付かなかったなあ」
「あった、絶対」
くそー、普段ぼーっとしてくせに、こんなときはきっぱりしてるんだよな。

「あったよねー、お母さん?」
今度は妻がターゲットに。頼むぞ、良いセンタリング。

「うーん、あれねー、うん。あったあった。でもあれ、お父さん何か知ってるよ?」
えー、スルーパス

「えーと、あれあれ、あれはね、ほら、犬につけるヤツと一緒。逃げないように。」
だめ?だめ?このセンタリング?

「お母さん、本当?」
「うん、本当(即答)」

「そっか、ピーターパンはいたずらが大好きだから、どっかにいっちゃわないようにヒモをつけられちゃったんだね」

息子の背後でハイタッチ。ふう危ない、なんとかゴール……でいいのか、これ?