ひっさびさにゲーム制作関係の話です。2年半ぶりです( ソーシャルゲームとか無料ゲームとかゲームの未来とか - GAME NEVER SLEEPS)。誰じゃー、わしを起こすのはー。はい、キャンクラです。スウィート。パズドラは褒めやすいですけどキャンクラことCandy Crush Sagaを制作者側から褒めてる記事ってあんまり観測範囲でみないので書いておこうかなーと思った折りにこんな記事が。
英King.comの人気スマホ向けパズルゲーム「Candy Crush Saga」、5億ダウンロードを突破 | vsmedia
いやー、5億ですって、5億。これがどれくらいって、日本の全国民が光の戦士になって3回転生を繰り返して遊んでも足りないくらいですよ。すごい、すごすぎる。
というわけで表題の件ですが、答えは「キャンクラは基本的に全年齢全人類を対象にしたソーシャルグラフを利用したソーシャルゲームだからである」というところにつきると思います*1。
では、なぜこのソーシャルゲームが運ゲーじゃないといけないのかをつらつらと書いていきますね。
最初にあなたのFacebookのフレンドを想像してみてください。家族、会社の同僚、幼なじみ、その配偶者、よく知らない外人。狙い定めた狭いターゲットではなく、幅広い人間が遊べなければならないことがわかると思います。そんな子供からお年寄りまでが遊べるゲーム。
そんな完璧なゲームがあるのでしょうか?思いいたるのは任天堂社のタイトル群かもしれません。でも、このゲームのプラットホームはゲーム機ではないのです。ゲームをする意識すら持たずに手にする可能性がある携帯電話やFacebookです。
精密なアクションはウェブブラウザ、タッチデバイスに向かず、脳年齢測定、体重計測、いずれも不可能。ストーリーに対する理解は期待できず、複雑なルールなどもってのほか。さて、誰もが簡単に遊べるゲーム。簡単というのも、また難しい。簡単にすれば簡単すぎると人は去りますし、難しくすれば自分には難しいと、やっぱり人が去っていきます。
はたして、そんなものが作れるのでしょうか?
イエス。
その答えがランダムに依存したパズルゲームです。それこそがゲーマーから運ゲーと貶されるキャンクラです。
うまいプレイヤーがクリアできる確率は当然高いです。でも、へたなプレイヤーでも数をこなせばラッキーでクリアできます。つまり子供からお年寄りまでプレイできるのです。なぜなら運ゲーだからです。
シンプルなパズルゲームなんで、複雑なルールも、好みの差が大きいストーリーも、膨大な組み合わせが可能なスキルツリーも、数百のキャラクターもいません。つまり子供からお年寄りまでプレイできるのです。
1ヶ月詰まっていた350面をクリアしたあるプレイヤーはこう言いました。
350面まで進んでいてもこの感想。なぜなら運ゲーだからです。
初日以降も継続して遊ぶ人が極端に少ないのが無料で遊べるゲームの特徴です。ジャンルや国によって異なりますが、大きな傾向としては少し遊んでやめるプレイヤーが大多数です。その割合は80パーセントとも、90パーセントとも、いやそれ以上ともいわれています。そして一度やめたら復帰の可能性はほぼない現実があります。
でも、これは運が重要なカジュアルなパズルゲームです。
- あとから友達がはじめて、そして自分も誘われたから。
- 飲み会で自分が100面くらい先に行ってて自慢したくなったから。
- キャバクラ嬢に、解けない面があると頼られたから。
- 気になるあの人から助けを求める通知が届いたから。
- 見下していた知人が自分を抜かしていってなんか悔しくなったから。
1回でも遊んでいれば、もう一度だけ起動しようかなーと思う機会が何度も訪れるはずです。でも、なぜこう思いやすいのでしょう。そう、ただの運ゲーだからです。遊ぶのに必要なのはちょっとの時間と、運だけだからです。そして、運さえよければ、詰まってた面もクリアできるはず、後から抜かしていった友達だってあっという間に抜きかえせるはず、と身体が覚えているのです。
そしてそう思ってしまったなら、どのデバイスでも進捗が簡単に同期するようになっているので、きわめて気軽に再開できるようになっています。誰でもいつでもどこからでも帰ってこられるゲームでなければならないことを、King社は自覚しています。AndroidでもiOSでもwebブラウザでも、コンパでも電車でも会社の昼休みでも人生に疲れた夜でも。
久しぶりに起動したらアップデート必須。アップデートしたら今度は別のダウンロードがアプリ内ではじまる。ホームスクリーンに見慣れないアイコンやなじみのないイベントバナーが所狭しと並ぶ。知らないキャラだらけで知らないルールが横行してる、そんなことは絶対に起こりません。
……とここまでが、どれだけゲーマーから貶されようと馬鹿にされようと5億ダウンロードを達成したキャンクラの基本的なデザインディレクションの話になります。これ以降は、
「これは運だけじゃクリアできない!」
「これをクリアできるのは俺だけ!」
という意識を持たせてくれる絶妙なゲームルールと、学習曲線・成長曲線の妙だったり、運が絡んでなければ攻略を積み重ねていけるけど、運を積み重ねるのは意図的にできないから金で解決してしまう購入への導線などなど、いろいろあってすごいんですが、とりあえずここまでにしときます。
手抜きに見えるかもしれませんが、レベルデザインも本当はすごいんですよ。なんせ運ゲーであることを担保しながらも、プレイヤーには自分の実力でクリアできたと思わせないといけないんですから。
あとはあれですねー、次世代機。もちろん、このまんまじゃないですが、この流れがコンソールに関係しないわけがないので、いろいろあれです。あれ。
まー、実はポッドキャストのほうではこんな感じでいろいろしゃべってますので、もし興味があれば覗いてみてください。みやおかさん(id:miyaoka)が素晴らしい文字起こしをしてくれているので、テキストで読むこともできます。