Wiiが持つ新しいゲームデザインの可能性

長いす。Wiiとかシラネって人はスルーしてくださいませ。

要するに言いたいことは、Wiiというハードには、僕のようなちょっと頭のおかしいゲーム性至上主義者が興奮する、新しいゲームデザインのフロンティアが広がってるってことです。

「新規ユーザーを開拓する、誰でも楽しめるゲーム機」「一度離れたユーザーを呼び戻すゲーム機」のコンセプトは確かにすごい。偉い。でもな、Wiiは只の体感ゲームハードじゃねえぞ、と。ゲーマーにも、いや、ゲーム性を重んじるゲーマーにこそ訴求できるハードだぞ、と*1

というのも、えーとですね、"Wii Sports"めちゃ面白いんですよ。E3でテニスと野球をちょっと見たくらいで「すぐ飽きる」とか言ってた僕が馬鹿でした。ゲーム開発者としていっぺん死んだほうがいい。全然飽きない。つか、ますます夢中。本当にごめんなさい。

ただし、実際に"Wii Sports"をやりこむまで漠然と比べてしまっていた「Star Wars Plug and Play」や「剣神ドラゴンクエスト」などの空間認識モノや、自分の画像でダイレクトに敵を叩いたりできる「EyeToy:Play」とは面白さの質が異なりますぜ。

これまでの体感ゲームWiiの関係を、あえて極端に例えるなら、「スーパーマリオ」と「マリオ64」くらい違うと言ってしまって良いと思う(GTA2とGTA3のほうが近いかも)。これまでの体感ゲームを乱暴に十把ひとからげに断定するならば、どうしても、自分が本来したい動きを、ゲーム内のルールに合わせて矮小化してる感覚があったじゃないですか*2

Wiiのコントローラは、空間上の座標に加えて、傾斜と加速度が判定できます。要するに、これまでの体感ゲームについていたペリフェラルに比べて、より正確にダイレクトに身体の動きをゲームに反映できるわけです。結果として、これまでの体感ゲームよりも、深いゲーム性を、熱いスコアアタックを楽しめるだけの濃いデザインを、可能にするんですね。

誰でも遊べるライト中のライトゲームと捉えていた"Wii Sports"は、玉の強弱、コースの打ち分け、スライス、トップスピン、ロブなどなどの、実はコントローラで再現しようとすると複雑な操作から成り立っているゲームでして。それを、手首のひねりや、位置や、スピードで、直感的に遊べてしまうんですよ。いや、すごい話じゃありませんか。これだけプレイして、僕、まだまだうまくなってるし。

これには、グラフィックのハイデフ化や演算スピードの進化に匹敵するゲームデザインの進化の可能性を感じずにはいられません。

調子に乗って「剣を使ったアクションゲーム」で例を考えると、ゴーストは速く振らないとダメージにならないとか、FPSのヘッドショットよろしく弱点を「突く」と即死だとか、剣を刺した後スライムを上に跳ね上げてマシンガンで撃ちまくるとか、ナイフは腹に刺した後ひねって空気を入れると相手は声も出せずに死んでいく(byマライヒ)とかが、これまで以上に高い精度で実現できるはず*3なのですよね。

そんなわけで、"Wii Sports"にハマって遊んでいる感覚は、驚くことに、おしっこ我慢できなくなるまで対戦し続けた、飯も食わずにスコアを競った、歴代のゲームにハマっていた感覚に驚くほど似てました。

具体的にどうかっていうと、テニスでボールの角度やスピードにあわせて身体が勝手に反応することで、より勝てる、高得点が出せるようになる感覚が、ストⅡの対戦で相手の足払いを無意識に立ち弱Kでスカしてコンボを叩きこんだりだとか、グラ3の2周目の結晶面でパターンが狂った時のアドリブの感覚、言うなれば、脳を介さずに目と手が繋がる感覚に似ているんですよ。違うのは、手だけじゃなくて、ダイナミックに体を使うところ。目と身体が繋がるんです。こりゃあ、中毒性が高い。そりゃ徹夜もするって話ですよ。

もちろん、この入力デバイスで操作の精度を高めるには、ソフトごとに相当な研究とトライアンドエラーが必要*4であることは間違いなく、ハイデフ化に匹敵するコストだと考えることもできます。でもね、これまでのペリフェラルに置き換えられる操作でいいなら、僕がWiiを触る前に感じていたように、「ふーん」で終わってしまう気がしなくもないです。

というわけで、ヘビーユーザー向けソフトとしての「ゼルダ」は本当にすごいと思うけど、Wiiにおけるゲーマー向けのソフトって、実はこれまでにない身体的技能を用いたゲームデザインの発明が鍵なんじゃないかと思う今日この頃です。

*1:だからこそ、以前書いたように、岩田社長が一般に向けた言葉であるところの「ユーザー層を拡大するゲーム=脳トレNINTENDOGS」に釣られる偉い人には悲しくなります。大事なのは、その精神であって、パッケージじゃないだろうって

*2:ちなみにDDRや「ハングオン」等の、自分のイメージとゲームプレイが一致しやすいゲームは、機能的制限が見事にゲームデザインと融合していた素晴らしい作品だと思う

*3:これまでも前フレームの座標と現フレームの座標を比べて加速度っぽいデータはとるとか、工夫はできたろうけど、なんせノイズが多くて精度が悪い

*4:もっとも、この点についてはミドルウェアの提供がある(http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol4/ailive.html