夫婦の会話

深夜、独り車を走らせ家路を急ぐ。ベイエリアの夜はいつの間にか冬の空気に染まっている。車内の空気は冷え切って、吐く息が夜目にも白い。渡米以来、万が一にも眠くなるといけないので、暖房はつけないようにしている。

しんと静まり返った玄関をくぐり、シャワーを浴びる気力も無く、芯まで冷え切った身体をベッドに横たえる。ふと、人恋しくなって、隣で寝ている妻の傍に寄ってみる。……ああ、なんて温かいんだろう。

職場での諍いや、不安が、ふんわりと溶けていく。時々、夫婦でいられることの一番の恩恵は、ただ好きな人と一緒にいられるだけでなく、好きな人の温もりの中で眠りにつけることじゃないか、と思う。

「う……ん?」
「あ、ごめん、起こしちゃった?」
「おかえりなさ……い。なんか……食べたの?」
「いや。でももう寝る」
「……そか」

半分寝ぼけながらも、俺のことを心配してくれる。僕は嬉しくて嬉しくて、思わずこう呟く。

「大好きだよ」
「ふふ……、……、……」

声が届いたのか、彼女は目を閉じたまま微笑んで、何かをささやいた。よく聞きたくて顔を寄せる。

「○○(妻のフルネーム)は、IDA-10が、大 嫌 い で す」

f:id:IDA-10:20061130160409j:image

逆『タッチ』キタコレ!いいよ、僕は愛してるから。大好きさ、照れ屋なところも。
……照れだよね、そうだよね?