ジーンズ探して3000哩

ここ最近の問題は、パジャマ以外、所有するズボンすべてに穴が開いていたことだった。日本から持って来たジーンズは1本を除いてすべて穴が開いており、ついにその最後の一本に穴が開いた。さらに代用ではいていた10年選手のチノパンにまで穴が開いた。

これが何を意味するかと言うと、レストラン、洋服屋や公共機関など、いろんなところで冷たい扱いを受ける確率が跳ね上がるのである。いろんな人間が入り交じるところで、最も手っ取り早くてあながち間違いでもない判断基準が外見というところだろうか。

しかし僕が求める生デニムのジーンズが全然見つからない。これを求めるのはひとえに、僕が多感な時期に古着バブル501XX信仰の洗礼を受け、その後に続くレプリカジーンズを自分で穿きこむのが基本でしょチルドレンの末裔だからである。社会人になってから、主に経済的な理由からワンウォッシュのユニクロジーンズ(写真参考:ちゃんと縦落ちするし、穿きこんでからのアタリもヒゲもわるくなかった。)に転んだ時期もあったが、やはり復刻リーバイスドゥニーム、フルカウント、エヴィスジーンズで形成された生デニム万歳の価値観は覆せなかった。

で、アメリカでもこじゃれた若者の店ではエヴィスは手に入るとGoogle先生に聞いて安心していたのだが、どれもこれも古着加工済みで話にならない。ならばアメリカ産はというと、若者に人気の各店"アバクロンビー&フィッチ"、"ホリスター"、"アメリカンイーグル・アウトフィッターズ"、"アーバン・アウトフィッターズ"、どこもかしこも、ユーズド加工したやつしか売ってない。あげく"destroyed"とかゆってちんこのあたりまで穴が開いてやがる。どんなニールヤングだよ。

ああそうだとリーバイス直営店に行ったらば、これもまたぜーんぶ着古したテイストが施してある。ユーズドっぽくないの、と言ってでてくるのはユニクロの方が100倍ましのぺったりした青色の現行ものだし、金のないオシャレ耳年増中学生時代に覚えた「生デニム=リジッド」という単語を駆使して出てきたのは、生デニムっぽい色のジーンズをずたずたにヤスリがけしたようなヤツだった。

お前らあれか、また「どーせ色落ちするなら、最初から落ちてりゃいーじゃん」的な短絡思考か。そんなに色落ちするジーンズを分けて洗うの面倒くさいか。色落ちくらい自分でなんとかしようとか思わないのか。バカバカあんたたちなんか大嫌い!

そんな宮崎泣きでいよいよ日本からの空輸を覚悟しはじめた頃、出会いは唐突にやってきた。それは近所のデパートのジーンズ売り場。現行ものでもブラックジーンズならまだいいかとなんとなくリーバイスコーナーをのぞいたら、あなたあるじゃないですか。インディゴの染料の匂いをぷんぷんさせてカチカチに固まった生デニムのジーンズが。

しかも、絶対的に足が短いこの俺が、裾上げいらずのサイズまである。ついに見つけた。先の直営店では意図が通じていなかったが、アメリカのリーバイスでは501の「Shrink to Fit」というラインが生デニムなのだ。もちろん、現行のフォルムだけど、この際贅沢はいうまい。しかも$30。やす。

生地も厚いし(たぶん13oz.)、これならユニクロより長持ちしそう。こんなよれよれの古着加工したクソ高い復刻より、ガンガン洗って自分のジーンズにできるほうが断然良い。というわけでアメリカの好感度1アップ。最近、アメリカ好感度が100くらいたまったら真剣に移住を考えてしまいそうで怖い。まあ、今マイナス300くらいなんでしばらく安心なんだけど。