なにこの「なぜなに物語」みたいなタイトル。ちなみにゲームデザイナでも可。さて、画も描けなければ、プログラムもわからないゲーム業界を目指す若者に放たれがちな言葉に「ゲームプランナ/デザイナはただのアイデアマンじゃない」という類いのものがある。それは別に間違っちゃいない。でも、それくらい誰でもわかる。
で、その後に「アーティストやプログラマをまとめる司令塔~」だの「ゲームの生みの親~」だのが続く。それもわかるだろ。ついでに、ゲームプランナとゲームデザイナの違いも調べりゃすぐわかるはず。
でも、具体的にどんなアイデアを出すべきかはあまり語られない。アイデアについて触れられてるとしたら「アイデアは出して当たり前」とかそんなん。それもわかるっつーの。
では、ゲーム制作の場で、僕ら企画職はどんなアイデアを出すべきか。僕の経験から言おう。
これはプランナでもデザイナでも構わない。ひょっとしたらゲーム制作じゃなくても通用するかもしれない。要するに、「プログラマもアーティストもアイデアを出せるようなフレームを提示しよう」ってこと。
そうした方がいい理由は大きく2つある。1つは、自分一人で考えつくアイデアには限界があるから。でも、みんなで意見を出し合うと、アイデア同士が化学反応を起こして、思いがけないナイスアイデアにつながることがよくある。
もう一つは、なによりみんなで作ると楽しいから。プログラマだって、アーティストだって、企画が指示した仕事をするだけでは楽しいわけがない。自分の意見が少なからず反映された仕事だったら、モチベーションも上がるし、それによってさらに良いアイデアも生まれるかもしれない。
例えば、次世代機での開発ということで、ゲームに物理演算を組み込むことがお題にあったとする。もちろん「物理演算をつかってなんかしよう」では、誰もが簡単にアイデアを出すにはフレームとして大きすぎる。ここで企画ならば、「物理演算をつかった長いヒモを使ったボスをつくるとして、どんなんが楽しい?」ぐらいまで具体的に提案したい。もちろん、自分のアイデアをまず披露するのを忘れずに。
ここで用意するアイデアは、さらにフレームを絞ってアイデアを出すためのひな形になるものであることが望ましい。たとえば、以下のような感じ。
- 体を巻き付けてくるヘビ(ヒモそのものがボス)
- 触手で攻撃してくる巨大メカ(体の一部がヒモ)
- 尻尾がキュートなセクシーキャット(つかみのための捨てネタ)
これならば、ヘビの代わりにドラゴンや、触手で攻撃→カメレオンの舌攻撃といった連想をすることも容易。また、ここまで具体的であれば、アーティストはアーティストの視点から「ヒモにでる軌跡が綺麗だと嬉しいよね」などといったアイデアがでるだろうし、プログラマからは、「ヒモが丸まった時に破綻しないように気をつけないと」のような一人のアイデア段階では気付きにくい技術的な話がでるはず。
ちなみに、こういう場でもっとも嬉しいのは、「尻尾」から発展して「尻尾9本出しちゃう?」のように、こちらの予想を超えつつも実現可能な予測をもってアイデアをだしてもらえるときだったりする。
と、このように、企画が提示すべきアイデアは「みんながアイデアマンになれるアイデア」だという話。
余録:
しつこいですが、カテゴリ[企画道]は夢見る若者に何か喋れと言われた時のための準備です。徹夜明けふらふら頭まっしろのまま壇上に立せられ「よく遊びよく学べ」とか言って失笑を買うのはもう嫌です。あくまでそれっぽい言葉を吐くのが目的です。糖尿になるくらい甘い内容なのは承知の上です。「じゃあ、具体的にどうやってアイデアを出すの?」とかいうまっとうだけど答えるのが面倒な質問には「それを考えるのが仕事だよ(笑)」とかわすと思います。ごめんなさい。