ゲーム開発の個人的な夜明け

さて、ゲームに対して深い考えを持つ方々がおっしゃることには、「ゲームは映像ばかりに金がかかりすぎて死ぬ」ということらしい。

もちろん否定はしないし、できない。プロジェクトチームに所属するアーティストの比率は増える一方で、その分ゲームが面白くなったかと言われれば、胸をはってそうだと答えることもできない。

でも、最低限満たすべきグラフィックのクオリティはどんどん上がっていって開発コストは上がる一方なのに、ゲームが売れないから回収もできないし、もうだめ死のう、みたいな感じになっていると。引用はしないけど、あっちこっちで。詳しく知りたいかたは、「イノベーションのジレンマ ゲーム業界」あたりをGoogle先生に聞いて欲しい。

で、それを、「新しい遊びや、独創的な発想で打ち破ろう!」「コミュニケーション!ゲーム2.0!」というのが、なんとなくのそういう人たちの総意というか、そんな感じだと受けとっている。

「『どうぶつの森』とか、『脳トレ』とかすごいじゃん。ゲームボーイの『スーパーマリオ』売れてんじゃん。いいじゃん、グラフィックに凝らなくても。」とかそういうことらしい。

その通り!絶望した!

でも。

でも。

この前ながながと書いたこととも関係するが、俺は必ずしも映像に走るゲームに未来がないわけじゃないと思う。「面白いゲーム=美麗グラフィック」とはまったく思わない。むしろ、ゲーム性に対して画の美しさは二の次だと思っている。だから、DSだろうが、携帯ゲームだろうが、面白いゲームをどんどん作ればいい。

要するに目指す方向と、通る道の違いだ。

ただ新しい感覚を求めるなら、DSにおいて新しい操作で楽しませてくれたように、レボリューションでもびっくりするような新しい感覚のゲームを作ればいい。携帯できるコミュニケーションツールとして、『どうぶつの森』や『NINTENDOGS』のようにWi-Fiコネクションをつかった新しい遊びを開発するのもさぞかし楽しいと思う。

また、単に新しいヒマつぶしを求めるなら、『脳トレ』や『メイドインワリオ』のように、楽しいミニゲームに上手く付加価値をつけたり、『マリオ』のような素晴らしい過去のゲームを再生産すればいい。

フリーで遊べる同人ゲームでも、インディーズからメジャーになった『Zoo Keeper』をはじめ、『洞窟物語』(http://hp.vector.co.jp/authors/VA022293/)や、『雪道』(http://f8.aaa.livedoor.jp/~sanctuar/)のように非常に評価の高いゲームがでている。コミュニケート系でいうと、「人狼」(http://ninjinix.x0.com/wolf/)とか。

しかし、俺は、どんなにイノベーションのジレンマだの、レッドオーシャンだの言われても、最新の技術をつかって、面白いゲームで、驚くような映像を造りたいという欲望を無視できない。

時代錯誤だと思われてもかまわない。まだ小学生で、ドキドキしながら入ったゲームセンターで見た「ファンタジーゾーン」の美しさに感動し、口がめくれて裏返る「エイリアンシンドローム」のボスに恐怖し、「アフター・バーナー」に小便ちびるほど興奮したあの頃の俺。あの感動に対する恩返しを、同じような感動で返したいと思うのは俺にとって不自然でもなんでもない。

そして、今なお、昔の俺のように、それに答えてくれる人たちがいると信じている。新人の頃、ゲームショウの手伝いで出展者として会場に立った時のことを忘れられない。始発で会場に到着し、続編のお披露目ムービーに感嘆の声を上げ、たった5分の試遊のために2時間も3時間も並ぶコアなファンの人たち。E3では、「HALO2」のムービーを見るために3時間待ちの列を作り、上映中も本当に興奮して大騒ぎしながら続編の美しさに歓喜する外人。

そんな人たちに答えるデベロッパがあってもいいじゃないか。答えたいと思う開発者たちがいてもいいじゃないか。

もちろん、開発費の高騰や、ゲーム市場が縮小し続けている現状を無視できるわけではない。また、あちこちで指摘されるまでもなく(なんかスーファミの頃から言われてたような……)、ユーザーはリアルな映像だけを求めているわけではない。そこで、自分なりに考えているのが、この前書いた、「ピンポイントの表現に特化する」という開発方法だ。まあ、普通に考えてそうなるだろうという結論だけれども、入社当時なら、とてもできるわけがないと思っていた。影も形もないゲームの要素・仕様を考え、必要な人や資材を予測するなんて。でも、今なら少し現実味を帯びている。というか、できなくちゃいけない。生き残れない。

それに、他社はさておき、今の現場で感じることは、適切なマネージメントを行えばまだまだ開発費を縮小できるよなってこと。日本にいた時に所属していたプロジェクトの一つは、プロジェクトリーダーがマネージメントに力を入れていて、他プロジェクトと比較して、高いクオリティを保ったまま期間もコストもかなり抑えられていた。具体的には、仕様の精度を高めることで、無駄なトライアンドエラーを減らし、コストを削減していた。もちろん、そのためには、最適な仕様の見極めができるように、どこに注力して開発するかをはっきりと設定する必要があるし、技術的な知識を深め、人材マネージメントとも関わる必要がある。

CGの技術が日進月歩な時代に、驚く映像を提供するって本当に難しいことだとも思うし、次世代機でも、プリレンダリングで作られる最新のCGに匹敵するクオリティで、リアルタイムに操作できるものを作るのは、物理的に不可能であると言える。でも、それは正攻法で考えた場合のことで、「ワンダ」が見せてくれたように、必ずやり方はあるはず。

それに、余談に近いが俺にとってもう一つ無視できないのは、実現が難しい開発は、苦しいが楽しいということ。GBAで疑似3D4人対戦アクションという無茶なソフトを開発中は、マーク3時代からのプログラマーさんの英知に感動の連続だった。ぜったいムリ!と誰もが思った表現を、「ラヂオの時間」のワンシーンのように「昔は半透明なんて、ハードに頼らないでもできたんだよ」みたいな職人セリフをぶつぶつ呟きながら、ものすごい発想の転換や、8bit時代のtipsで乗り越えていく姿は、本当に後光が射していた。前回のプロジェクトはPS2,GC,Xboxのマルチプラットホームでの開発だったが、やはり苦しいPS2の処理の重さを、職種に関わらずみんなで相談して、いろんなポップアップで少しずつ少しずつ、薄皮を剥くようにフレーム数を上げていったり、GCのメモリ不足を解決するために、力を合わせてこちらで○○k、あちらで○○kと削っていく過程は、こんなことをいったら殺されるかもしれないが、本当に楽しくて嬉しかった。

もちろん、目指すのは、鼻血がでるほど面白い遊びと結びついた、驚くような映像なわけで、まずはそこを頑張れってことで、

http://livedoor.blogimg.jp/drecom_kikuchia/imgs/a/c/aceb844e.jpg

年末に買ったカプコンクラシックコレクション(日本では3月発売?)で「ロストワールド」のハードモードを服を買ってクリアするまで部屋から出ません。パラメリウムごときに俺を止めることはできんのじゃあぁぁ!!FPSとか考える前に「戦場の狼」と「ガンスモーク」クリアしてみろゴルァぁぁぁ!

ともあれ、今年もよろしくお願い致します。